昨今話題になっている 『悪の華』という漫画のアニメを見て、久々になんとも言えない嫌悪感のような物を感じた。
気になる、というのは、おそらくそのステージに近い所、そして、そこから少しでもあがかないと足を引っ張って引きずりこまれるような段階にいることの証左なんだというのが、自分の今までの持論であった。
で、それを元に、分析してみると、
自分が気になった部分
1)表現に対して
◎せっかく先人が上げてきたアニメーションという表現の良さの部分に喧嘩を売っているとしか思えない表現だと思った。
◎最先端を行くふりをしているが、そういった邦画・アート系アニメを見慣れていれば、ある意味そちらの分野では「テンプレ」化された表現。
◎決してアニメ業界が培ってきたなにかと、その邦画・アート・サブカル界隈の空気の融合のようなことをしているわけではない。ただアニメを否定しているだけ。
◎テンプレ化された表現を使っている以上、それは萌え絵を使うことと本質的には変わらないのではないか。表現において前衛的な挑戦をしたいのならば、それは、(どのテンプレートを使おうが構わないはずなので)原作に忠実な絵柄でもできたはず。
だとすると、あえてこの絵柄(というかアマチュア風の実写)でやった意味は、それ以外ではない。つまり、「アニメ絵じゃない視聴しない作品の表面しかみないキモオタ排除」という意図があるように見える。
自分が気になったのは、それは、キモオタじゃなくて普通に内容や表現を見ようとする層も避けているように見えた。
つまりこれを見るのは、「通常萌えアニメ等『視聴者に媚びた』表現をする媒体を嫌悪する、オタクじゃない俺かっけーしているアングラ気取り層」
気取りと書いたのは、表現の見た目のテンプレートがとっつきやすい萌え絵であろうが、逆にとっつきにくい表現であろうが、中身がよければ気にしない人は多いし、創作ってそういうもんだと思うので。
2)作者や出版業界の人の反応
◎(一部以外の)鑑賞者の視点を制作側が(体感的には)理解できていない
こういう作品が一定の需要があるのは、精神的に安定している人達の、「陰鬱な空気を味わってみたい」「ちょっと気になるあの子から罵倒されてみたい」という欲求があるからだろうと思う。これを、表面だけなぞってしまうと、いわゆるテンプレ「ツンデレ」なり「ヤンデレ」なり読者の都合のよいだけのヒロイン像になりすぎて飽きられるので、この記号の間を接着する糊をもつ、黒い空気感で埋められる作者には一定の需要があるのだろう。
しかし、『ちょっと気になるあの子』の好みは千差万別であり、性格面では作中のキャラの行動で「一定の性格が好み」な人にフィルタリングされているが、ここで容姿まで、ピンポイントに特定してしまうと、本当にそのキャラに(恋のような感情を伴った)好意を持つ対象者が限られてしまう。
おそらく、適度に抽象化されたアニメ絵(リアル調含む)というのは、人々の想像力で、「視聴者が好きなように補える」形式だからこそ、多くの人に(恋人の代用として)好かれるキャラができるのだと思う。
一方、実写トレースという演出は、非常にキャラの造形が「固定されやすい」手法を用いた以上、対象者は限りなく少なくなってしまう。
つまり、この手法で限りなく「ヒロインに故意のような擬似感情を抱く」視聴者をしぼっているということは、絵柄萌えだけではなく、本来(内容的な意味での)萌え(シチュエーション萌え)を期待している人達をも、制作者自ら排除してしまっているのだが、どうやらそのことに対しても無自覚なように思われた。
◎作者が描きたいのが本当はこういう表現だったとすると、今の絵を嫌々描いているのかと思った。作者というのは往々にしてそういう物だし、それでとがった表現がうまくライト表現に融合するのは構わないけれども、それを、「この作品は良い」と認めて売り出している企業側が、そういう反応をするのはどうかと思う。
パトロン側も、既存の萌え(絵柄に限らず、美少女が罵倒することによる快感)表現を否定したい側なのか。
通常、パトロンというのは、良さがわかるから自分のところで支援して今後も制作を続けてもらいましょう、というものではないのか。
3)マーケティングモデルとして
◎この手の作品が評価され、ビジネスとして成立している土台としては、必ずしも作品の主題と、作者が訴えたい層だけがみているわけではなく、ほとんどがそれ以外の「外野」が占めているのに、彼らを切り捨てるような真似をしている。
これが自腹を切った自主制作なら構わないけれども、流通・スポンサー等多くの他の分野の人を巻き込んでいる「商売」なのだから、商売としてこれはいかがなものか。
4)その他 人々の目線
◎全然先進的な表現でもないし、ある意味サブカル界では「テンプレ」表現なのに、それを新しがっている人が多いこと。
掲示板等で言われるまで気にもしなかった部分
◎絵柄が萌え絵ではない(押井、今アニメ等と同列に並べて)
◎テンポが遅い
◎EDが怖い
…ざっとまあ、こんなところなのですが、
書いてみてなるほど、自分はどうやら「絵面によって萌えるオタク」ではないものの、完全なる「シチュエーション、動き、表情、表現に萌えるオタク」だったのだな、と気付かされました。(さらにガジェット(先進技術)オタクの気もありますね)(あと、損得勘定オタクですか…?)