荷内思考開発所

ありがちなことばでありがちなことものを考えてみる

就活難への改善策を指摘されてる多くのコンサルさんやブロガーさんに対して20代の自分が思うこと~その3~

《前記事の末尾の再掲》

就職難にあえぐ若者に対するこのような提案をよく見かけるようになりました。

「べつにその仕事にこだわらなくたっていいじゃない。人生の価値はそれぞれだ。もっと楽につける仕事(ただし、世間的に地位があまり高くなかったり、出世の出来ない仕事だったりします)に就けばいいよ。ほら、枠ならいっぱいある!」

非常に合理的だとは思いますが、やはり、それまで「自分ならいい企業に就ける」と信じ込んできた若者たち、どうも、そういうのには尻ごみします。

それを、(就職難が直撃していない世代の)人々は「高望み」に感じるのでしょう。

ある意味、その通りと言えばその通りと言えます。

――でも、高望みせざるを得ない事情が、当の若者にはあるのです。

 

結論から言うと、「ランクを落として気楽に生きましょう。」と言った類のアドバイスは、本当に伝えたいと思う当の相手には響かないと思われます。


その意見を聞いてすぐさま、「そうですね。今までちょっと固執しすぎてました。ランクを落として気楽に行きます!」と頷ける人は、そもそもそんなに就職難で思い詰めてしまう人達じゃないんです。

 

一番思い詰めてしまう層は、「ランクを落として名誉を失うぐらいなら死ぬ」なんです。実際行動に移るかどうかはさておき、そういう発想で生きているんです。

 

まず、この就職難に大手企業やホワイトカラーの高給職を目指して、目指しつづけて、失敗する っていうここで対称にしている「若者」とは、先ほど述べた『日本』という下駄を脱がされたことに気付かない、けど自分はいけるだろう と思っている人達になります。

 

下駄があってもそもそも達しないだろうな、と言う人は目指しませんし、

下駄が無くても無問題な人もいますよ。そもそも興味がない層も。でも彼らは除外してます。

 

 

一つ目は、安定して裕福な生活からの転落、へのとりわけ強い恐怖です。

この世代は、小学校の頃は皆ゲームボーイで遊んでいました。ポケモンがありました。遊戯王がありました。家電はあって当たり前、皆塾にいけて当たり前。

ただ、自分がホワイトカラーな仕事に就かないと(そもそも平均賃金が下がっているので)、自分が子供の頃暮らしたような経済的に安定した生活を営めない、という恐怖です。(自分一人が生きるなら別ですよ。)でも、彼らは安定を望む人達なので、やはり、自分が子供のころ過ごしたような「平均的な家庭」を営みたいと思うようなのです。

だから、それなりの給料をもらえて地位の高い仕事を目指すのでしょう。

 

そんな人に、「昇進はないので給料は安いけど就ける仕事」をお勧めした所で、興味を示すでしょうか。

 

もちろん、実体としては、ちゃんと安定して稼げる仕事は(就活生が集中してエントリーシートを出すような)有名企業ばかりではないですよ。でも、そもそもそういうことに気付けて、堅実に能動的に動ける人は、就活難民にはならないと思われます……先ほどの若者分類でいけば、彼らは下駄がなくても問題ない人に含まれることでしょう。

 

さらに、現代の若者は生まれてから景気の変動による物価の上昇下落と言うのを経験していません。自分自身、知識としてはあっても、実際そういった物の価格の急激な変動をしたという話をリアルに伺うと、「壮絶だな~……」と思います。

戦後闇市があり、高度経済成長し、変動相場制になり、バブルがはじけた上の世代にとっては当たり前だと思うのですが、不景気が原因と言うよりは、我々世代は「変化」を経験していないんです。

だから、就職出来なくて低賃金で不安定な生活をそもそも想像できないので、マリオのゲームオーバーのように死ぬんですよ。(さきほど述べたように、必ずしも彼らのレールに外れたら低賃金で不安定とは限らないのですが……)

 

多分、外から見ている人には、「だから、それ、高望みなんだって。もっと現実と自分の実力をわきまえろよ」って思うことでしょうね。

でもそれって例えてみればこういうことなんです。

 

Aさんはとある慢性的な目の病に罹患しました。

徐々に色が見えなくなり、1年後には世界が完全にモノクロになるという病です。

Aさんの趣味は映画観賞でした。あと漫画を読むこと。美術館賞も好きで、お洒落なカラー雑貨のインテリア誌を眺めたりするのも心休まるひと時でした。

Aさんは、まだ色がかなり見わけられますが、1年後はどんな映画を見ても、モノクロにしか見えなくなる未来が決定しています。一旦視界がモノクロになったらもう改善はしません。公式には治療法もありません。

Aさんは頭を抱えます。「二度と映画が今のように観賞できなくなるなんて!」

しかし、Aさんは、高い金をだして、借金をして、身を滅ぼしながらでも、効くかどうかわからない闇の治療を受けて回ります。

ある人は言います。その人は、趣味はオセロでした。付き合い以外ではあまり映画観賞はしないタイプでした。「見えないっていったって、色が見えなくなるだけだろ?俳優の顔は識別できるし、視力が下がるわけでもない。それに、そもそもモノクロの漫画は無問題じゃないか!」 

そして、これ以上身を滅ぼさないように、Aさんを嗜めようとします。

しかし、Aさんは叫ぶのです。

「お前に俺の気持ちの何がわかる!」

 

(続きます)